大判例

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広島高等裁判所 昭和29年(う)540号 判決

記録を調査すると、原審第一回公判調書には、検察官が起訴状を朗読したこと、これに対する被告人及び弁護人の被告事件についての陳述の記載がなされていないことは所論のとおりである。しかし検察官の起訴状の朗読は公判調書の必要的記載事項とされていないのであるから調書に右の記載がないからといつてその朗読がなかつたものと速断することはできない。又被告人及び弁護人の被告事件についての陳述は公判調書の必要的記載事項となつているけれども、右の陳述はもとより強制すべきものではなく裁判所はただその陳述の機会を与えれば足るのであつて、若し任意に右の陳述をしたときはこれを調書に記載すべきものとしたものであることは刑事訴訟法第二九一条第二項同規則第四四条等の趣旨に照し明らかである。ところで本件は記録によるも、所論のように起訴状の朗読がなく且つ被告人及び弁護人に対し特に被告事件について陳述する機会を与えなかつたと思われる資料並びに形跡等は少しも存しないのみならず、却つて前記公判調書の記載によれば、裁判官の併合審理の宣言後、証拠調に入る前の段階において、被告人及び弁護人は併合にかかる昭和二九年七月二七日附起訴状の送達に関し別に異議はないと述べながら右の起訴状の朗読及び被告事件についての陳述に関しては何等の異議をも述べることなくして次の証拠調手続に進んでいること、証拠調に入つた後行われた被告人に対する質問並びに供述によると、その前提において当時起訴状の朗読が為され且つ被告人は全部これを認めて争わなかつたものであることが窺われるから、かかる場合においては右の手続は適法に履践されたものと認めるのが相当である。それ故論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 尾坂貞治 裁判官 石見勝四)

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